保育士にとって最も注意しなければならないのは、子どもたちの健康状態です。
時期によって、流行りやすい病気やケガは異なります。
それらを理解しておくことで、予防や早期のケアを施せるようになります。
4月〜5月に流行しやすい病気・ケガ
入園や進級で新しい環境に飛び込む子供たちにとって、春はストレスや緊張を受けやすい季節。
気候が不安定なこの季節は、気温差でも体調を崩しがちになります。
いつもよりも子供たちの様子を注意して見てあげたいですね。
はしか(麻疹)
【出典】いしゃまち
近年、子どもだけでなく大人の間での流行が続き、話題になった「はしか」。
感染力が非常に強く、空気感染、飛沫感染、接触感染でうつります。
子どものワクチンは、1歳児と小学校入学前1年間の計2回接種する制度となっています(※地域で大流行してしまった場合は生後6ヵ月から接種することができます)。
予防接種を受けたからといって感染しなくなるわけではありませんが、重症化は防ぐことができます。 はしかに感染・発症すると、根本的な治療法はありません。合併症として、肺炎や気管支炎、中耳炎、脳炎を引き起こしやすく、まれに亜急性硬化性全脳炎(SSPE)という中枢神経疾患を発症することもあります。
ただ、一度かかると免疫がつき、それが一生涯持続します。
かかってしまった場合、登園は解熱後3日を経過してからとなります。
大人でもかかるので、予防接種を2回きちんと受けていないという保育士さんはワクチンを接種しておくことをおすすめします。
<症状>
はしかは感染後10日前後の潜伏期間があり、その後、つぎのような症状が出ます。
下痢を伴う場合もあり、幼児では、特に発熱中の脱水に注意が必要です。
・発熱する(39℃前後)
・咳が出る
・鼻水が出る
・体に赤い発疹が出る(発熱から3~4日後)
・口の中に白い発疹が出る(赤い発疹が出る1~2日前)
風疹(三日はしか)
【出典】情報のカタマリ
三日はしかと呼ばれることもあり、感染経路は飛沫感染や接触感染です。
風疹は、感染しても症状が出ない人も15%ほどおり、無自覚のまま流行を広げてしまうケースがあります。はしか(麻疹)よりも感染力は弱いものの、かかれば根本的な治療法はなく対処療法に頼ることになるため、感染をさけるために予防接種を受けることが大切です。
予防接種を受ければ95%以上の人に風疹の免疫ができます。
風疹は、子どもがかかった場合は比較的症状が軽いのですが、大人がかかると発熱期間が長く関節痛などに苦しむケースも多いため、免疫を持っていない保育士さんはワクチン接種しておきましょう。
風疹にかかった場合、登園は麻疹と同じく解熱後3日を経過してからとなります。
<症状>
2~3週間の潜伏期間の後、次のような症状が出ます。
・発熱する(37℃前後。3日程度で下がる)
・咳が出る
・鼻水が出る
・首や耳の後ろのリンパ節が腫れる
・体に赤い発疹が出る(発熱から3~4日後)
みずぼうそう(水痘)
【出典】チョコすた
昔は、おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)と並び、子どものうちにかかっておいた方がいい病気とされて予防接種もありませんでしたが、平成26年10月から、みずぼうそうのワクチンが定期接種に追加され、無償で受けられるようになりました。
1歳の誕生日から3歳の誕生日までの間に計2回接種することになっています。
みずぼうそうは、ワクチンを2回接種することでほぼ感染を防ぐことができるといわれています。
一度かかれば体内に免疫ができ、その後はかからなくなるといわれていましたが、抗体が消えて再発症するケースも報告されています。また、ウイルス自体は神経節などに潜伏しており、免疫が低下したときなどに活性化して帯状疱疹を発症することもあります。
みずぼうそうにかかった場合も、登園は麻疹と同じく解熱後3日を経過してからとなります。
<症状>
みずぼうそうは、空気感染、飛沫感染、接触感染によりうつります。
潜伏期間は2週間程度で、発症すると以下のような症状が現れます。
・発熱する(38℃前後)
・体に赤い発疹が出る(発熱から1~2日後)
・赤い発疹が水泡になる
・水泡が膿泡になる
・膿泡が痂皮(かさぶた)になる(発熱から7日後頃)
6月〜7月に流行しやすい病気・ケガ
熱中症
6月に入ると陽射しが強くなり、7月になると気温が急に高くなることが多いです。
その影響で、気温の変化に弱い低い子どもは熱中症になることがあります。
熱中症になると体温をコントロールできなくなり、さまざまな症状が現れます。
けいれんは熱中症の代表的な症状です。
大量に汗をかくと、水分を補給する必要があります。
その時に塩分が不足した状態で水分だけを摂取すると、けいれんが起りやすくなるのです。
熱射病も熱中症の症状のひとつです。
体温が上がりすぎると中枢神経が正常に働かなくなります。
まっすぐ歩けなくなり、ふらつくことが多くなるのが熱射病の初期症状です。
さらに症状が酷い場合は失神することもあります。
体温の急上昇により血管が拡張し、脳に血液が循環しなくなるのが原因です。
顔面蒼白になっている場合は、すぐに救急車を呼びましょう。
手足口病
一般的な保育園では7月からプール遊びが始まります。
暑い年は6月から、園庭でホースを使った水遊びをする保育園も多いでしょう。
手足口病のウィルスは水を媒体として感染することが多いため、6~7月に子どもたちの間で流行り始めます。
手足口病になると、発熱する場合が多いです。
同時に手足などに水泡のような発疹が見られるようになります。
発疹は臀部や腹部にできることもあるので注意して見ましょう。
一ヶ所に集中して何十個もできる場合があり、痛みや痒みを伴います。
さらに口元にも痛みが生じ、よだれの原因になるケースも少なくありません。
痛みが激しい場合は、食欲がなくなることもあります。
症状が治まった後も、しばらくの間はウィルスが体内に残るので、他の子どもに感染しないようにプールや水遊びは避けた方が良いでしょう。
ヘルパンギーナ
6~7月に突然高熱を発症した場合は、ヘルパンギーナである可能性があります。
ヘルパンギーナはいわゆる夏風邪で、高熱だけでなく喉の痛みも伴います。
喉の一帯に水泡ができて、赤く腫れあがることが特徴です。
しばらくすると水泡は破けてなくなりますが、その部分が白くなって痛み始めます。
ヘルパンギーナの原因となるウィルスは毎年5月頃から現れますが、6~7月にかけて活動が最も盛んになります。
便や唾液が感染源になることが多く、集団生活を送っている子どもがかかりやすい病気です。
発症した場合、解熱剤で熱を下げて、水分補給を怠らないようにしましょう。
8月〜9月に流行しやすい病気
暑さがピークを迎える8月。夏の疲れが出やすい9月。
これからの季節に子どもたちがかかりやすい病気・ケガをまとめました。
園での子どもたちの様子に当てはまる症状があったら、保護者の方とも協力して対応していきましょう。
【病気】咽頭結膜熱(プール熱)
出典:BABYRINA
プールに入る季節に流行りやすいことから「プール熱」とも呼ばれる「咽頭結膜熱」は、アデノウイルスによる感染症です。プールでうつったり、くしゃみなどの飛沫、タオルや食器を共用してもうつります。
<症状>※以下の症状が同時に現れるとは限らない
・38~40℃の高熱が数日続く(4~7日程度)
・喉が腫れる(扁桃腺炎になることも)
・結膜炎(目が真っ赤に充血する)
【病気】流行性角結膜炎
出典:MARBLE
プール熱と同様、アデノウイルスが原因の感染症です。「はやり目」とも呼ばれます。
感染力が強いため、感染者が出たら、手で目をこすらせない、タオルなどを分けるなど、ほかの園児にうつさないための対応をしましょう。
一年中見られる病気ですが、夏場は特にプールなどでうつりやすいため、注意が必要です。
<症状>
・目やにが出る
・結膜が赤く充血する
・涙が出る
【病気】溶連菌感染症(猩紅熱しょうこうねつ)
出典:mamatenna
溶連菌感染症はA群β溶血性連鎖球菌による感染症で、主に喉に感染して咽頭炎や扁桃炎を起こします。風邪と違い、咳や鼻水が出ないのも特徴です。 飛沫感染でうつるケースがほとんどです。
<症状>
・発熱(38~39℃)
・喉が腫れる(咽頭炎・扁桃炎)
・体や手足に赤い発疹ができる
・舌の表面に赤いぶつぶつができる(苺舌)
8月〜9月に注意したいケガ
子どものケガは季節を問わず年中気をつけたいものですが、特にこの季節は屋外で遊ぶ機会も多く、特有のケガが起きやすい時期です。 この時期特に気を付けたいケガは主に以下の3つ。
・やけど
・虫刺され
・おぼれ
やけど
やけどは、花火などで遊ぶ機会があることから注意が必要です。
<対処法>
もし、やけどをしてしまった場合は、すぐに流水や氷を使って冷やすことが大切です。
冷やすことで皮膚の深部へのダメージを防ぐとともに、痛みを和らげることもできます。
様子を見て、必要に応じて受診しましょう。
虫刺され
虫刺されは、そのままにしておくと子ども自身が掻きこわして「とびひ」に発展してしまう恐れがあるため、素早くかゆみを取り除いてあげることが大切です。
<対処法>
かゆみを鎮めるための抗ヒスタミン成分が配合された市販のかゆみ止めを使って様子を見てみましょう。かゆみや炎症が収まらない場合は皮膚科の受診をおすすめします。
おぼれ
あってはならないことですが、プールや海で遊ぶ際におぼれてしまう可能性もゼロではありません。まずは、そばで見ている大人が目を離さないことが重要です。
<対処法>
子どもに限らず、おぼれてしまった本人はパニックになってしまうもの。できれば何人かで協力して、すぐに水から出すことが大切です。
そのうえで、意識・呼吸・脈を確認し、救急車を呼びます。呼吸が確認できない場合は人工呼吸を、脈が確認できない場合は心臓マッサージを行い、救急車が着くのを待ちましょう。
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