小児科医の先生が考えたという「声かけ変換表」をご存じでしょうか。
これはもともと発達障害を持つお子さんへの声かけに対するアドバスをまとめた表ですが、保育現場においても参考にしたい声かけがたくさん載っています。
乳幼児の世話をする先生ならば、ぜひ声かけ変換表を仕事に役立ててみましょう。
保育の現場にいると、忙しいときに限って園児が予想外の行動をしてしまい、思わず頭ごなしに怒ってしまうこともあるでしょう。
例えば園児が給食の時間にふざけて走って、友達の給食をひっくり返してしまったときなどは、思わず「走るな!」「あーあ、もう!!」など、怒鳴ってしまうこともあるかもしれません。ただ「あーあ、もう!!」と怒っただけでは、園児はびっくりするだけで何が悪かったのか反省することはできません。
そのようなとき「声かけ変換表」では、「走るな!」の声かけを「歩こうね」に変換し、具体的に今は走ってはいけないことを伝えるようにしています。また「あーあ、もう!!」に対しては「ぞうきんで拭けばOKだよ」と対処法を教える言葉になっています。
つい先生としても感情的な言葉が出ることもあります。しかし声かけ変換表を参考にすれば、今何をすべきか分かりやすく伝えることができ、やってしまったことに対しては対処法を教え、改めて何が悪かったのか園児に考えさせることにもつなげることができます。
園児に対して注意をするとき、簡単な一言で済ませてしまうことも多いでしょう。例えば入ってはいけない危険な場所に園児がいたときは「危ないからダメ!」、片付けの時間なのにずっと遊んでいるときは「いい加減にしなさい!」、場所をわきまえず大声を出す子には「うるさい!」、など。
いずれも注意をしている言葉ではありますが、園児にとっては何度も聞きなれたフレーズかもしれません。毎回同じ言葉で注意をされていると、園児にとっても心に響かないものになります。
そのようなとき声かけ変換表では次のように言い換えられています。「危ないからダメ!→先生は、ケガが心配だなあ」、「いい加減にしなさい!→あと何分で終われそう?」、「うるさい!→声を『これくらい』にしてくれる?」などです。
いずれも具体的に園児にどうすれば良いのかを考えさせる言葉がけであり、感情で一言怒鳴るだけではありません。注意する際は感情で怒鳴らず、どう言えば園児に伝わるのか一呼吸おいて注意をすることが大切です。
この他にも声かけ変換表には、参考にしたい言葉がけがたくさんあります。「早く支度しなさい!→5分で終われば、あと10分遊べるよ」、「何度言ったら分かるの!→どうしたらいいと思う?」、「(イヤなど)そんなこと言ったらダメ!→ そうか~、イヤなんだね~」など。
こう見ていくと、相手の気持ちを否定せず、共感しつつもどうすれば良いのか考えを促すような言葉がけがたくさんあります。声かけ変換表は全部で約24個の言葉が載っています。
しかしそれをすべて参考にするのではなく、変換表を参考にしつつ、園児にどう言葉を伝えれば良いのか自分なりに考えてみることがおすすめです。
声かけ変換表の言葉には「相手の気持ちに寄り添う」、「具体的にどうすれば良いのか考えさせる」、「自分の気持ちを伝える」、ということが示されています。このような言葉がけを使うことで、園児にはより深く物事を教えられますし、自分としても感情的にならずに相手に大事なことを伝えることができます。
また園児に対して使われることの多い声かけ変換表ですが、実は大人に対しても有効な言葉がけと言えそうです。保護者や職場の人間関係にも声かけ変換表を参考にし、相手の気持ちに寄り添った発言をすることで、豊かなコミュニケーションを図ることができるでしょう。